特集 ことば/高校生 短歌交流戦
2024/2/29
ドキュメント「高校生短歌交流戦」
盛岡第三(岩手)+高崎商大附(群馬)
作品
〈1回戦〉
立ち並ぶ無機物同士の
影踏みあい
歩む途中で渦中に溶ける
熊谷惇希(盛岡三)
ひかりって鋭すぎだよ
やわらかく沈むサドルの影が
とけ合い
田島颯太(盛岡三)
〈2回戦〉
はるかぜが
鼻をくすぐる遊園地
二人の永遠が手首に見えて
小泉大和(盛岡三)
君の手の温度はいくつくらいだろう
メニュー表見て
悩み続ける
小野光璃(盛岡三)
〈3回戦〉
宵闇は
人も孤独も抱き留める
星屑めいた全てに等しく
髙橋健太朗(高崎商大附)
人類は
おととい月に降り立って
私は蕎麦屋の面接落ちる
福島環(高崎商大附)
〈4回戦〉
もう成人
でもまだワクワクしてるんだ
らせんの塔をのぼる瞬間
井上綾乃(高崎商大附)
病院で
ばったり出会う螺旋階段
君の目の中冷めた感情
植原愛佳(高崎商大附)
ドキュメント交流戦
岩手と群馬を繋いで短歌の交流戦をしたい。そんな突飛な申し出に、両校の文芸部のみなさんは快く応えてくれました。今年1月、「盛岡という星で BASE STATION」と高崎商大附の教室を繋いで行われた盛星主催「高校生 短歌交流戦」、その一部始終をお届けします。
まずは組分け。こんな感じで県を超えた4人チームが、互いに力を貸しながら作品づくりに取り組みます。
いよいよお題の発表。手元のスマホに写真が届きます。ドキドキ。
うーん。
うーーーーーーーん。
形になってきたら、チャットで作品を見せ合って、
ここはこういう言い回しだとどうかな?と、4人で作品を磨き上げていきます。
審査員役の盛岡三高の生徒たちも思わず参加。お題を選んで短歌を詠みます。
ちょっと余裕が出てきたチームと、
ギリギリまで悩み、粘る人。
いよいよ作品が出揃いました。
高崎も準備完了! さあ、 審査会をはじめよう!
司会と審査員も盛岡三高の生徒たち。
対戦ごとに歌を発表して、作品に込めた思いを説明します。
審査員からの鋭い質問にも、
しっかりと作品の意図を伝えて、みんなの理解がどんどん深まっていきます。
一組おわるごとに勝敗を決めていきます。グーとパーで投票! 審査員も悩む、悩む!
気になる結果は、熱戦に相応しく、2対2の「引き分け」となりました!
両校の顧問の先生からもご挨拶をいただき(モニター画面左下にいらっしゃいます)、
このような素晴らしい交流ができたことを喜び合いました。
最後にみんなで記念撮影!
また夏の短歌甲子園本番で会おうー!
昨年の短歌甲子園は見学したものの、作品が出来上がる過程は見たことがなかった盛星編集部。短い歌に込められた、その先に広がる世界の豊かさに驚き、大いに感動した1日となりました。
普段はお題の「言葉」から発想を広げて、浮かんだ情景を短歌に落とし込むので、初めから景色が見えてしまっている「写真」は、お題としてはなかなかの強敵だったようです。だけどそんなことは物ともせず、瑞々しい作品を披露してくださった生徒のみなさんには感謝しかありません。また、司会や審査員を務めてくださった盛岡三高の文芸部のみなさんも、本当にありがとうございました。
そして、少しでも良い交流体験となるようにと、オリジナルルールの制作にアドバイスを下さり、運営にも大きな力を貸して下さった小玉先生と竹村先生にもお礼を申し上げます。
今年の夏も、盛岡で「短歌甲子園」が開催されます。静かで熱くて爽やかな、本当にすばらしい大会です。ひとりでも多くの方に見ていただきたいなと、すっかり短歌が好きになった編集部は思うのでした。
おしまい。
取材協力:
岩手県立盛岡第三高等学校 文芸部のみなさん
高崎商科大学附属高等学校 文芸部のみなさん
Photo: Takugo Miwa, Mari Sugawara
Edit: Yutaka Yaegashi
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