特集 Sunday City/鼎談「日曜だけど休みます」後編
2023/10/10
週末の盛岡を歩いていると気が付くことがあります。あのお店も、このお店も、けっこう日曜日に休んでる。そして街の人も「いいんじゃない?」って感じで過ごしてる。
そこで、稼ぎ時に休んでる(ように見える)店主たちの、「ワーク」や「ライフ」について聞きました。盛岡だから休めてる…? 休んでるように見えるけれど実際は…? 店を守る主たちの隠れた奮闘ぶりやお茶目な本音に、ぜひ耳を傾けてみてください。
森理彦さん/ござ九(茣蓙九 森九商店)
創業200年以上、荒物や日用品を扱う生活雑貨店・通称「ござ九」の七代目。
高階勝雄さん/元祖 盛岡じゃじゃ麺 白龍
盛岡三大麺のひとつじゃじゃ麺の元祖「白龍」(ぱいろん)の店主。
熊谷拓哉さん/六月の鹿
桜山エリアに店を構える、自家焙煎の珈琲店「六月の鹿」の店主。
前編はこちら
<<< Scene 01 ユニークな顔合わせが実現しました
Scene02
実際のところ、休めてます?
熊谷(以下:) 高階さん(
)はちゃんと休んでるんですか? 仕事しちゃいません?
高階(以下:) 仕込みがあって来ちゃったりします。何かが残ってたらやらなきゃいけない。
僕も来ちゃうな…。日・月を休みにしてるんですけど、月曜日は朝から普通に仕事してる。日曜日は極力休むようにしてるけど、なんか来ちゃいますね、一回。
編集部 営業は休みだけど、お仕事をする日としてカウントしてる?
そうです。コーヒーもここで焙煎してるから、どうしても作る時間が必要で。平日だけだとやりきれないところを月曜日にやって。経理もやって。買い出しもして。
森 (以下:) うちはもうほぼ仕事をしています。家と店が一緒なので、もうずっと。
しちゃいますよね。
やっぱりちょっとしたことを日曜に。お客さんも来ないし電話も鳴らないので、集中してやれる。片付けなんかも。
編集部 そうなるともう、働いてることが日常。
ただちょっとは休みを作っておかないと。なんだかんだ用事を作るのは日曜日になるので。
編集部 みなさん結構、休みが、少ない。森さんはご自宅がお店なのもあって、仕事と暮らしの境目みたいなものがすごく滑らかというか、うん。
オンとオフの境目
朝6時に家を出て、帰るのが19時半とか20時。寝に帰ってるだけみたいなところがあってあんまり境目がないですね。
編集部 15時に閉めてそこからも?
発送して、朝焼いた豆を選別して、あとお菓子を作る。早く帰りたいっす。
編集部 オンとオフがなかなか…。
だから日曜日は唯一ダラダラ。なかなか旅行に行くとかまでにはならない。
ほんとに離れられないですね。
もう何もできない。
本店だけは正月とお盆に休んでいるので、奥さんの実家に行ったりはします。
それは… オフのような…(笑)
編集部 オンのような…?(笑)
いずれ完全オフってないですよね。コロナの間も「どうやって生きていくよ」ばかり考えて遊んでられなかった。通帳とにらめっこですよ。
編集部 ほんとそうでしょうね…。
本当に時々あればいい。10年に一回くらいしっかりした休みが。
編集部 森さんは何か、休みの日にここに行くみたいなのって?
いやー、特にない(笑)
編集部 でもお子さんとどこか… 行事とか。
子供の野球に付き添ったりしますけど、それも仕事でなかなか行けないですね。
編集部 みなさん思った以上にオフって感じじゃないんですね。
寝てる時間が多いです。
体のメンテナンスとかしたくなってくる。歳とともにガタが(笑)
編集部 みなさん体力勝負ですよね。自分が欠けたら店が開かないかもしれないってなると、体調崩してられん! みたいな。
コロナ前よりはそこは休みやすくなったのでいいんですけど
編集部 熱があったら開けられないみたいな。盛岡は、稼ぎ時でも暮らしを優先して、お休みをしっかり取ってる感じがあるねって話してたんですが、みなさんもっと必死でいらっしゃる。
みんなが休む日があった方がいいんじゃないのって思う。例えばお正月の三が日とか。
昔は休みでしたよね、正月は。
ですよね。そこの本当に休んでもいいような日も開けるようになって、みんな休まらなくなった。
編集部 どこから変わったんですかね。
なんでこう働かなきゃいけない世の中になったのか。
コロナを経て、休み方も変わった?
編集部 一方で、日曜休みとか、例えば週2日とかでしっかり休む個人店が増えてきました。
コロナでみんなすごい考えたんだと思いますよ。
編集部 クローズして事務にしっかり時間を割くとか、家族との時間を作るとか。ちょっと暮らしを優先したり、しっかり休もうみたいな空気ができてきますかね。
うちの規模の喫茶店を東京でやろうとしたら、固定費が倍以上かかると思うんですよ。そうすると休みを減らしてずっとやるって絶対なる。だけど盛岡だと日曜日に休んでもなんとかできるんですよね。
向こうは固定費が高すぎるんです。
ほんとそう。だから向こうでやってる人はすごいと思う。めちゃくちゃパワーがないとできない。
物産展で東京に行くと人の流れが違います。こっちみたいにのんびりできない。
絶えず、止まらず、みたいな感じですよね。
お客さんのパワーもすごいし。
物産展で、岩手県は大人しいって言われました(笑)
編集部 県を代表して(笑)
他のところは、出店側もガツガツ来るみたいで。
編集部 のんびりでも良いという空気が、街全体にふわっとあるような気はなんとなくしています。
だから過ごしやすいですよね、盛岡は。
それでもなんか許される。
編集部 お店に行く側も、例えば「野球の試合があるので休みます」って書いてあってもぜんぜん嫌な気持ちにならないというか。
まじで!? 書いてみようかな!(笑)
編集部 なんかちょっと「家族の用事があります」とかでも。
たしかにやりやすくなってきてるかもしれないです。
編集部 そっかあ、楽しんで休日過ごしてるんだな。良かった。みたいな感じがあるよ、と。
しっかり休みたいんですけどね。
でも10日とか休むと逆におかしくなったりします。
新婚旅行で1週間空けたんですけど、自分だけ。
おおー。
帰りたくなかったもんね。
一同 (笑)
またあれがはじまるのかって?(笑) いやあ、それはそうっすよ。
最終日が近づいてくるごとに。
編集部 あと3日、あと2日…(笑)どこに行ったんですか?
シンガポール。
編集部 ああ、誰も手出しできない(笑)
うんうん(笑)
コンセントが合わなくて、携帯も充電できなかったんですよ。
ということは…。
もう連絡のしようがない。
最高じゃないですか!(笑)
一同 (笑)
盛岡って、どうですか?
過ごしやすいですよ。都会すぎず、田舎すぎず、そこそこ物も買えるんで。
編集部 ずっと開けなくても店を成り立たせられるからこそ、生活の一部に仕事があるみたいな感じで続けていけるのかなと思ったりもしたんですが。
向こうはちょっと止まったら、死ぬリスクが高いから。
編集部 バーンって(笑)
こっちだとなんとか助かる。そこは、ゆるい。
人がいないから休ませてって言ったら休ませてくれるしね。
編集部 たしかにたしかに。
ニューヨーク・タイムズに取り上げられた時、地元の人が「何もないのに?」って言ってましたけど、そこがいいじゃない?
編集部 さっき歩きながら、久しぶりに平日の昼に中の橋を渡ったら、こみ上げてきました。職場のあたりより時間がゆっくり流れていて、歩いてたら知り合いに会って。なんかいい街だなって(笑)
一同 笑
あちこちで人に会ったりしますね。
編集部 めっちゃしますよね。
橋を越えてこっち側にくると、都会だなって感じる。人の流れが違います。
編集部 全然違いました。平日にあまり行き来しないせいか、今日しみじみと感じました。
「さんさ踊り」の時も、こっちは人でめちゃくちゃじゃないですか。なのにあっちに渡ると「しーん」(笑)
一同 笑
何これ、盛岡すごい!って(笑)
編集部 盛岡話は止まらなくなっちゃう(笑) さて、みなさん、今日は貴重な…ええと、水曜日の時間をありがとうございました。
大丈夫、別に貴重でもないですから!
今、お店、めっちゃ大変かもしれないですよ?(笑)
編集部 急に11人入っちゃってたりしてね(笑)
一同 笑
終わります。
Photo: Mari Sugawara Edit: Yutaka Yaegashi
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